墓じまいを考えたとき、最初に気になるのが「いくらかかるのか」「補助金は出るのか」の2点ではないでしょうか。
鎌倉新書の「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」では、実際に改葬・墓じまいをした(している)回答者の費用帯は「31万円〜70万円」が31.3%で最多でした。30万円以下(16.8%)と合わせると約48%です。ただし、この調査は同社サービスを経由して資料請求・霊園見学をしたユーザーを対象とするインターネット調査であり、全国の墓じまい費用をそのまま代表する統計ではありません。自治体の支援も全国一律ではなく、制度ごとに対象墓地・条件・受付状況が異なります。
この記事では、自治体8例について、各自治体の公式情報をもとに助成・使用料還付・改葬先の支援と申請上の注意点を整理します。寺院墓地・民営霊園を含め、実際に利用できる制度は墓地の所在地や管理主体、個別の要綱によって異なるため、工事を依頼する前に自治体と墓地管理者の双方へ確認してください。
この記事でわかること
- 墓じまいの費用は「31万円〜70万円」が最多で、実施者の約48%が70万円以下
- 自治体支援は全国一律ではなく、対象墓地・条件・受付状況が制度ごとに異なる
- 支援は「原状回復費の助成」「使用料の還付」「改葬先の提供」の3タイプに分かれる
- 予算上限を設ける制度では、年度途中で受付が終わる場合がある
- 助成が使えない場合も、還付制度の確認や見積り比較、改葬先の検討で負担を見直せる
【結論】墓じまいの費用と補助金の全体像

はじめに、費用と補助金の関係を1枚で整理します。細かい条件はこのあとのセクションで順に解説しますので、まずは全体像をつかんでください。
| 項目 | 現在の状況 |
|---|---|
| 費用の中心帯 | 31万円〜70万円(実施者の31.3%) |
| 70万円以下で完了した割合 | 約48%(30万円以下16.8%+31万円〜70万円31.3%) |
| 補助金の対象 | 自治体・制度ごとに対象墓地、対象者、条件が異なる |
| 支援の主なタイプ | 原状回復費の助成/使用料の還付/改葬先の提供 |
| 本記事8例の助成上限等 | 制度・区画により異なる(受付終了の制度あり) |
| 申請・支払いのタイミング | 制度ごとに異なる(事前申請・事後請求など) |
費用データは鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」、助成額は各自治体の公式サイトによります。
支援制度を利用できるかは、主に次の点を確認します。
条件① 対象となる墓地・使用者に該当すること
本記事で紹介する8例は、いずれも自治体が設けた特定の公営墓地・都立霊園等に関する制度です。ただし、全国の支援制度が公営墓地だけを対象とすると一般化はできません。寺院墓地・民営霊園の場合も、墓地所在地の自治体に利用可能な支援がないか確認してください。
条件② その自治体に制度が設けられていること
公営墓地であっても、制度があるかどうかは自治体ごとに異なります。「近隣の市にあるから自分の市にもあるはず」とは限りません。
条件③ 予算・申請時期など制度固有の条件を満たすこと
予算上限を設ける制度では、年度途中に受付を終了する場合があります。一方、還付制度など予算枠の扱いが異なる制度もあるため、個別の要綱・受付状況を確認することが重要です。
墓じまいの費用はいくら?内訳と総額の目安
総額は「31万円〜70万円」が最多|2026年の最新調査
2026年1月に実施された鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」では、同社サービスを経由した調査対象者のうち、実際に改葬・墓じまいをした(している)回答者について、費用分布が次のように示されています。
| 費用帯 | 割合 |
| 30万円以下 | 16.8% |
| 31万円〜70万円 | 31.3%(最多) |
| 151万円以上 | 14.0% |
30万円以下と31万円〜70万円を合わせると約48%です。31万円〜70万円の割合は前回調査の24.2%から31.3%へ増えています。ただし、調査対象は鎌倉新書の「いいお墓」を経由して資料請求・霊園見学をしたユーザーであり、この結果だけから全国の「相場」や実勢価格を断定することはできません。
151万円以上との回答も14.0%ありました。撤去工事の条件や改葬先、遺骨の数などで総額は変わるため、調査結果は一つの参考値として捉え、個別に見積りを確認することが大切です。
費用の内訳は大きく5項目
墓じまいの費用は、次の5つに分けて考えると見通しが立てやすくなります。
| 費用項目 | 内容と金額の考え方 |
| 墓石の解体撤去・原状回復工事 | 区画面積と作業条件で決まる。石材店の見積りで確認 |
| 閉眼供養のお布施 | 公的な統計はなく、寺院・地域で幅がある |
| 離檀料(寺院墓地の場合) | 定めのある費用ではなく、寺院との話し合いで決まる |
| 行政手続きの手数料 | 手数料の有無・金額は自治体ごとに確認 |
| 改葬先(納骨先)の費用 | 永代供養墓・樹木葬・納骨堂など、選ぶ形式で大きく変わる |
改葬許可の手数料は自治体によって異なります。たとえば磐田市は1件300円です。遺骨が複数ある場合の申請単位や手数料の数え方も自治体の取扱いによるため、現在の墓地がある市区町村に確認してください。
閉眼供養のお布施や離檀に伴う費用には、全国一律の公定価格はありません。寺院や墓地との関係、地域、個別の事情によって異なるため、一般的な金額を当然の基準とせず、必要な費用とその内容を墓地管理者・寺院に事前確認してください。
【参考】自治体の助成上限額を面積で単純換算した値(工事相場ではありません)
下表は、自治体が公表する原状回復費の助成上限額を区画面積で単純に割った参考計算です。助成上限額は制度上の給付限度であり、実際の工事価格や自治体が想定する市場単価を示すものではありません。
数値の比較は制度設計の違いを見るためのもので、墓石撤去工事の相場や見積りの妥当性を判定する基準としては使えません。
| 自治体・区画種別 | 区画面積と助成上限額 | 1平方メートルあたり換算 |
| 市川市霊園 第4種 普通墓地 | 2.5平方メートル/21万円 | 約8万4,000円 |
| 市川市霊園 第1種 普通墓地 | 4.0平方メートル/24万円 | 6万円 |
| 浦安市墓地公園 通常墓所 | 3.0平方メートル/15万円 | 5万円 |
| 市川市霊園 第2種 普通墓地 | 6.0平方メートル/29万円 | 約4万8,000円 |
| 太田市八王子山公園墓地 | 4.5平方メートル/20万円 | 約4万4,000円 |
| 市川市霊園 第3種 普通墓地 | 12.0平方メートル/44万円 | 約3万7,000円 |
| 市川市霊園 第1種 芝生墓地 | 4.0平方メートル/7万5,000円 | 約1万9,000円 |
出典は市川市霊園一般墓地返還促進事業、浦安市 墓所返還者等支援事業、太田市 八王子山公園墓地の各公式ページです。なお浦安市は通常墓所(3.0平方メートル)と小型墓所(1.5平方メートル)で上限額が同じ15万円のため、面積の異なる区画を並べて比較できる通常墓所のみを掲載しています。
単純換算値を見る際は、次の点に注意してください。
換算値の違いは、そのまま工事単価の違いを意味しない
助成上限額の設定方法や対象費用は自治体ごとに異なります。この表だけから、区画が小さいほど実際の工事単価が高いなどの傾向を結論づけることはできません。
墓地種別による助成上限額の差も、実費の差とは限らない
市川市では同じ4.0平方メートルでも芝生墓地と普通墓地で助成上限額が異なります。ただし、公式ページはこの差を実際の撤去工事単価の差として説明しているわけではありません。
見積りは、墓地の管理規則、撤去範囲、搬出条件、石材量などを確認したうえで比較してください。施工業者を選べる場合は、条件をそろえて複数社から見積りを取ると比較しやすくなります。
費用が高くなりやすいケース
同じ広さでも、次のような条件では工事費が上がりやすくなります。事前に墓地の管理者へ確認しておくと、見積りの理由を理解しやすくなります。
- 山間部や高台にあり、重機が入らず手作業になる区画
- 参道が狭く、資材の搬出入に人手や小運搬が必要な区画
- 外柵や巻石が大きく、撤去する石材の総量が多い区画
- 隣接する区画と近接しており、養生や安全対策に手間がかかる区画
- 遺骨の数が多く、洗浄や乾燥、複数体分の改葬手続きが必要な場合
墓じまいの自治体支援8例|助成・還付・施設変更

自治体の支援は大きく3タイプ
自治体の支援制度は名称がさまざまですが、中身は次の3タイプに整理できます。1つの自治体が複数のタイプを併用している場合もあります。
| タイプ | 内容 |
| ①原状回復費の助成 | 墓石の撤去や更地化にかかった工事費の全部または一部を補助 |
| ②使用料の還付 | 契約時に納めた永代の使用料の全部または一部を、制度条件に応じて還付 |
| ③改葬先の提供 | 自治体の使用料の免除・減額や施設変更などの支援 |
自治体の支援は「補助金」という名称に限らず、使用料の還付や合葬式墓地への施設変更などの形もあります。検索時は「墓地 返還」「使用料 還付」「合葬式墓地」などの制度名も確認すると見つけやすくなります。
主な自治体の制度一覧
2026年9月時点で公式サイトに掲載されている内容をまとめました。金額や条件は変更されることがあるため、申請前に各自治体の窓口で最新の内容を確認してください。
| 自治体・墓地 | 制度の内容 |
| 群馬県太田市/八王子山公園墓地 | ①墓石撤去費用の助成(実費と20万円のいずれか低い額) |
| 千葉県市川市/市川市霊園 | ①原状回復費の助成(7万5,000円〜44万円)②使用料の返還③合葬式墓地の特例許可 |
| 千葉県浦安市/墓地公園 | ①墓石撤去費等の助成(上限15万円)③合祀室への改葬(使用料の負担なし) |
| 東京都/都立霊園 | ③施設変更制度(合葬式墓地へ改葬。使用料・年間管理料は不要) |
| 静岡県磐田市/市営霊園 | ②使用料の50%を還付(使用期間を問わない) |
| 大阪府泉大津市/公園墓地 | ②使用料の還付(15年未満50%、15年以上30年未満30%) |
| 大阪府岸和田市/岸和田市墓苑 | ②原状回復して返還した場合に使用料の一部を返還 |
| 岡山県玉野市/玉野市霊園 | ②使用料の還付(未使用50%、使用済み10%) |
以下、それぞれの内容を公式情報にもとづいて補足します。
群馬県太田市|墓石撤去費用助成金(上限20万円)
太田市八王子山公園墓地では、無縁墓地対策として墓地返還時の墓石撤去費用を助成しています。助成額は、祭祀費用を除く墓石撤去にかかった費用の総額と20万円のいずれか低い額です。
対象は、平成31年4月1日以降に返還届を提出して墓石の撤去が完了した利用者で、管理料の滞納がない方です。助成の対象は同墓地の撤去費用に限られ、ほかの墓地の費用は対象になりません。申請は撤去完了後、明細書と領収書を添えて行います。
千葉県市川市|原状回復費の助成と使用料の返還
市川市霊園一般墓地返還促進事業は、原状回復費の助成と使用料の返還、合葬式墓地の特例許可を組み合わせた制度です。
原状回復費の助成限度額は区画種別ごとに定められており、普通墓地が21万円〜44万円、芝生墓地が7万5,000円です。使用料の返還は、使用許可後3年以内に未使用のまま返還した場合は納付額の2分の1、それ以外は4分の1が対象になります。
さらに、返還を条件として市川市霊園の合葬式墓地に公募以外で申し込める特例があり、生前・遺骨あわせて2体まで(1体用7万1,000円、2体用14万2,000円)利用できます。この特例に限り、市外在住の方も申し込めます。
なお、令和8年度分の使用料の還付および原状回復費用の助成は、予算額に達したため受付を終了しています(同市公式サイト・令和8年5月22日時点)。 令和8年度分は受付を終了しています。今後の実施有無や受付時期は、市川市の最新の公式情報を確認してください。
千葉県浦安市|墓石撤去費等助成制度(上限15万円)
浦安市の墓所返還者等支援事業は、墓地公園の通常墓所(3.0平方メートル)または小型墓所(1.5平方メートル)の使用者が対象です。
墓石撤去など原状回復に要した費用について、返還後に上限15万円の補助金が交付されます。あわせて「合祀室改葬等許可制度」があり、墓所に埋蔵している遺骨の改葬先として合葬式墓地(合祀室)を使用料の負担なく利用できます。使用者とその配偶者の生前予約も、1人につき3万5,000円で申し込めます。
申請には石材店からの見積書(原本提示)と使用許可証の写しが必要で、直接または郵送で環境衛生課に提出します。申請日の翌月に適用可否が通知される流れです。
東京都|都立霊園の施設変更制度
東京都公園協会が案内する施設変更制度は、都立霊園の使用者でお墓の承継者がいない方が対象です。現在使用しているお墓を返還し、遺骨を東京都の合葬式墓地に改葬すると、東京都が使用者に代わって遺骨を管理します。
一般・芝生・小型芝生・壁型の各埋蔵施設と、長期収蔵施設みたま堂の利用者が対象です。改葬後は使用料・年間管理料が不要になり、使用名義人本人とその配偶者(事実婚関係にある方を含む)、東京都パートナーシップ宣誓制度にもとづくパートナーシップ関係にある方も納骨できます。
ただし、現在のお墓を更地にする費用は使用者の負担です。また施設変更は年3回募集されています。受付時期や対象施設などは、現在使用中の霊園窓口で確認してください。
静岡県磐田市|使用料の50%還付
磐田市の市営霊園では、平成28年4月1日から使用料還付制度が運用されています。改葬や使用見込みがないなどの理由で墓地を返還した場合、使用期間に関係なく、使用許可時に納めた使用料の50%が還付されます。
対象は緑ケ丘霊園、八王子霊園、福田霊園、竜愛霊園、駒場霊園、池田霊園、富里霊園、加茂西霊園です。使用料は区画により17万円〜30万円のため、還付額はおおむね8万5,000円〜15万円になります。使用期間に関係なく50%が還付される点が特徴です。
大阪府泉大津市|経過年数に応じた使用料の還付
泉大津市公園墓地条例第19条と別表3にもとづき、使用場所を原状回復して返還した場合、使用許可を受けてからの年数に応じて既納使用料が還付されます。
還付率は15年未満で100分の50、15年以上30年未満で100分の30です。30年以上経過した場合は還付の対象になりません。あわせて、既納管理料のうち未経過年数分も還付されます。返還にあたっては墓石の撤去と除草を行い、原状に回復したうえで届け出が必要です。
大阪府岸和田市|返還時の使用料の一部返還
岸和田市墓苑では、墓所が不要になった場合に原状回復のうえ返還手続きを行うと、使用料の一部が返還されます。手続きには墓所返還届と返還金請求書、印鑑登録証明書、振込口座がわかる通帳の写しが必要です。
返還率は使用状況や経過年数によって変わるため、公園緑地課の墓苑担当に確認してから工事の手配を進めるとスムーズです。
岡山県玉野市|未使用50%・使用済み10%の還付
玉野市霊園では、霊地を返還した際に既納使用料が還付されます。還付率は霊地を使用しなかった場合が50%、使用した場合が10%です。
ただし、平成28年3月31日以前に使用許可を受けた本人が返還する場合などは、未使用100%、使用済み50%の還付率が適用される場合があります。一方、その使用者が亡くなり、返還のために承継手続きをした場合は、承継後の取扱いとして未使用50%、使用済み10%が適用されると市が案内しています。許可年月日だけでなく、現在の使用者と承継の有無も確認してください。
なお、未使用の区画であっても除草などの清掃が済んでいなければ返還手続きができません。市による現地の確認検査を経てから還付される流れです。
自治体支援の申請手順と見落としやすい3つの注意点
申請の基本的な流れ
支援制度の申請時期は自治体ごとに異なります。浦安市のように返還・撤去を進める前に制度申請と適用可否の通知を受ける制度もあれば、市川市のように見積書・領収書・工事前後写真などを返還手続き時に提出する制度もあります。次の流れは一般的な確認順序として参考にし、必ず各制度の要綱を優先してください。
墓地を管轄する自治体の窓口(環境課・市民課・霊園管理事務所など)に問い合わせ、制度があるか、その年度の受付が続いているかを確認します。要綱や申請様式もこの段階で受け取っておきます。
見積書、使用許可証、工事前写真など、必要書類は制度ごとに異なります。工事前の申請・承認が必要な制度では、承認を受ける前に着工しないよう注意してください。施工業者の選定条件も墓地の管理規則で確認します。
市川市のように工事前後の写真を必要書類としている制度があります。写真や見積書が必要か、撮影方法・書類の形式に指定があるかを、着工前に確認してください。
遺骨を他の墓地・納骨堂へ移す場合は、現在の遺骨がある市区町村で改葬許可を受けます。墓地返還の原状回復範囲や工事手順は管理者の指示に従ってください。閉眼供養などの宗教上の儀礼は、必要に応じて寺院・家族と相談します。
工事後に返還届、領収書、工事後写真、請求書などを求める制度があります。必要書類、現地確認の有無、支払時期は制度ごとに異なるため、案内された手順どおりに提出してください。
注意点① 年度予算に上限があり、途中で受付が終わることがある
予算上限がある制度では、工事を依頼する前に受付状況を確認することが重要です。
予算上限を設ける制度では、申請状況により年度途中で受付が終了することがあります。実際に市川市では、令和8年度分の使用料の返還と原状回復費用の助成が予算額に達し、2026年5月22日時点で受付終了と案内されています。
受付終了時期は年度・制度によって変わります。助成を前提に工事計画を組まず、検討を始めた時点で最新の受付状況と事前申請の要否を確認してください。
注意点② 申請時期と支払い時期は制度ごとに違う
撤去費助成では、工事後の実費を確認して交付する制度があり、その場合は事業者への支払いが先になることがあります。ただし、申請・承認のタイミングや請求方法は制度によって異なるため、「必ず全額を立て替える」とは限りません。
助成金の入金前に工事費の支払いが必要になる可能性があるため、交付時期と事業者への支払条件を事前に確認して資金計画を立てましょう。
注意点③ 工事前の申請・書類が必要な制度がある
制度によっては、工事前の申請・承認、見積書、工事前写真などが必要です。たとえば浦安市では申請後、翌月に適用可否が通知され、その後に返還手続きを進める流れが示されています。着工前に制度の手順を確認してください。
墓じまいを検討し始めたら、工事を依頼する前に自治体と墓地管理者へ確認するのが安全です。事前確認により、申請時期や必要書類の見落としを防ぎやすくなります。
自治体の助成が使えないときに費用を見直す7つの方法

本記事で紹介する自治体支援は特定の公営墓地・都立霊園等を対象としています。寺院墓地・民営霊園にあるお墓についても、自治体や墓地管理者に利用可能な支援の有無を確認したうえで、次の方法で費用を見直してみましょう。
方法① 必要な工事の範囲を管理者に確認する
区画やお墓の状態によっては、外柵の撤去や基礎の掘削が不要な場合があります。どこまで原状回復すればよいかを管理者に先に確認しておくと、見積りの前提が明確になり、過剰な工事を避けられます。
方法② 複数の石材店から見積りを取る
施工業者を指定・登録制としているかどうかは、墓地・霊園の管理規則によって異なります。まず管理者に業者選定の条件を確認し、自由に選べる場合は同じ工事条件で複数社から見積りを取って比較しましょう。自治体の助成上限額を面積で割った数値は工事相場ではないため、見積り判断の基準にはしないでください。
方法③ 使用料の還付制度がないか確認する
本記事で確認した例では、磐田市は市営霊園の返還時に使用料の50%を還付し、玉野市も使用状況や許可・承継の条件に応じた還付制度を設けています。補助金の有無だけでなく、使用料の還付制度があるかも個別に確認しましょう。
方法④ 改葬先の費用を優先的に見直す
改葬先の費用は、墓石撤去費などと並んで総額を左右する要素の一つです。2026年の鎌倉新書調査では、改葬先として「永代供養(合祀・合葬墓)」が43.2%で最多となり、樹木葬24.1%、納骨堂13.3%でした。
合祀・合葬墓は施設によって料金や埋蔵方法が異なります。また、共同埋蔵後は遺骨を個別に取り出せない施設が一般的ですが、具体的な取扱いは契約前に管理者へ確認してください。
方法⑤ 自治体の合葬式墓地を活用する
浦安市では、墓所返還者が合祀室改葬等許可制度を利用する場合、墓所内の遺骨の改葬先として合祀室を使用料負担なしで利用できます。都立霊園にも施設変更制度があります。対象者・対象施設・受付期間などの条件があるため、利用前に当年度の案内を確認してください。
方法⑥ 親族で費用を分担する
墓じまい費用について親族間でどのように分担するかは、墓地使用契約や管理規則、個別の事情によって異なります。契約上の支払義務を確認したうえで、必要に応じて関係する親族と分担方法を話し合いましょう。
方法⑦ ローンやクレジット払いを検討する
石材店によってはクレジットカード払いに対応している場合があり、金融機関にも各種ローンがあります。利用可否や金利・手数料、返済条件を確認し、自治体支援の交付時期だけを理由に借入れを前提とせず、無理のない資金計画を検討してください。
墓じまいの手続きの流れ|改葬許可はオンライン申請もできる
遺骨を移すには改葬許可が必要
遺骨をほかの場所に移すには、墓地、埋葬等に関する法律第5条にもとづき、墓地のある市区町村長の許可を受ける必要があります。手続きの順序は次のとおりです。
お墓は家族全員に関わるものです。改葬先の希望や費用の分担も含めて、早い段階で話し合っておきます。
現在の墓地・納骨堂の管理者には改葬の意向を伝えます。墓地埋葬法施行規則では、改葬許可申請に、現在の墓地等の管理者が作成した埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面などを添付することが原則です。具体的な証明方法は自治体の様式を確認してください。
改葬許可申請では「改葬の場所」の記載が必要なため、改葬先を決めてから申請します。受入証明書などを追加で求めるかどうかは市区町村によって異なるため、申請先の案内を確認してください。
墓地のある市区町村に改葬許可申請書を提出します。手数料は自治体により異なり、磐田市では1件につき300円です。
閉眼供養などは宗教上・慣習上行われることがありますが、墓地埋葬法上の改葬許可要件ではありません。墓地管理者や寺院と相談し、必要な手順を確認したうえで遺骨を取り出します。
石材店が墓石を解体撤去し、区画を更地に戻します。工事前後の写真提出を求める制度もあるため、必要書類を事前に確認してください。
改葬先の管理者に改葬許可証を提示・提出し、施設の案内に従って納骨します。自治体支援については、事前申請か事後請求かをあらかじめ確認し、所定の時期に手続きを行います。
改葬許可の申請はオンラインでも受け付けられる
2025年3月26日、厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課は「埋葬、火葬又は改葬許可のオンライン申請に関するQ&Aについて」を各自治体に通知しました。
このQ&Aでは、改葬許可の申請を電子メールなどのオンラインで受け付けることが可能であること、さらに墓地や納骨堂の管理者が作成した埋蔵の事実を証する書面についても、原本確認が必要と市区町村が判断する場合を除き、PDF化したデータをメールに添付するなどの方法で提出できることが示されています。
実際に受け付けるかどうかは各市区町村の判断ですが、遠方のお墓を墓じまいする場合、役所に足を運ぶ回数を減らせる可能性があります。申請前に、窓口へオンライン申請に対応しているかを確認してみる価値はあるでしょう。
なお、墓地、埋葬等に関する法律施行規則の一部を改正する省令により、改葬許可証などの様式は2026年4月1日から縦書きが横書きに改められています。古い様式の用紙も当分の間は使用できるとされていますが、申請書をダウンロードする際は最新版かどうかを確かめておくと確実です。
墓じまいを気持ちよく進めるための3つのポイント
ポイント① 家族・親族との合意を先に整える
墓じまいでは、費用だけでなく家族・親族との合意形成も重要です。お墓を継ぎたいと考える親族や、合祀に抵抗を感じる方がいる場合もあるため、関係者の意向を確認しながら進めましょう。
理由と計画を共有し、関係者の意向を確認してから手続きを進めると、後の行き違いを減らしやすくなります。
ポイント② お寺との相談は早めに、丁寧に
寺院墓地の墓じまいでは、離檀料や閉眼供養のお布施が話題になります。これらは定価のある費用ではなく、話し合いのなかで決まるものです。
国民生活センターに寄せられた相談では、墓に関する相談件数が2023年度1,046件、2024年度1,018件、2025年度1,077件と推移しており、「高額な離檀料を請求され円滑に進まない」といった事例が挙げられています。
こうした行き違いを避けるには、お墓の維持が難しくなった事情を早い段階で率直に伝え、金額の根拠や内訳を確認しながら進めることが有効です。話がまとまらない場合は、消費生活センター等の相談窓口に相談する選択肢もあります。
ポイント③ 遺骨の行き先を先に決める
改葬許可の申請は、改葬先が決まっていなければできません。また、合祀後に遺骨を個別に取り出せない施設もあるため、契約前に管理規則を確認してください。
遺骨の数が多い場合は、1体ずつ個別に供養するのか、まとめて合祀するのかで費用が大きく変わります。見学や資料請求を通じて複数の候補を比べたうえで決めると、後から迷いが残りにくくなります。
墓じまいを取り巻く状況|改葬件数と無縁墳墓の課題

自治体による墓地返還支援の背景を理解するうえで、改葬件数や無縁墳墓をめぐる公的統計も参考になります。
厚生労働省の衛生行政報告例によると、改葬件数は2024年度(令和6年度)に176,105件となり、過去最多を更新しました。前年度の166,886件から9,219件、率にして約5.5%の増加です。10年前の2014年度は83,574件でしたので、この10年でおよそ2.1倍に増えた計算になります。
| 年度 | 改葬件数 |
| 2014年度(平成26年度) | 83,574件 |
| 2023年度(令和5年度) | 166,886件 |
| 2024年度(令和6年度) | 176,105件 |
また、総務省行政評価局が実施した墓地行政に関する調査では、公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いのあるものを含む)と回答した市町村が58.2%(445市町村)にのぼることが明らかになっています。
制度の目的は自治体ごとに異なります。たとえば市川市は霊園用地の有効活用と墓地の無縁化対策を事業目的として明記し、太田市も八王子山公園墓地の無縁墓地対策として撤去費助成を案内しています。今後の制度新設・拡充を断定できる公的根拠はないため、各自治体の最新情報を確認してください。
なお総務省は2026年4月3日、この調査に関する2回目のフォローアップ結果を公表し、撤去した無縁墳墓の墓石の取扱いについて2025年12月に地方三団体へ事務連絡を発出したことを明らかにしています。制度をめぐる動きは続いているため、自治体の最新情報を定期的に確認しておくとよいでしょう。
墓じまいの費用と補助金に関するよくある質問【FAQ】
- 墓じまいの補助金・自治体支援は全国どこでも利用できますか。
-
全国一律の制度ではありません。本記事で紹介した8例は特定の公営墓地・都立霊園等を対象とする制度で、対象者・対象墓地・受付状況はそれぞれ異なります。寺院墓地・民営霊園を含め、お墓の所在地の自治体に利用可能な支援があるか確認してください。
- 補助金はいくらもらえますか。
-
制度と区画の種別によって異なります。本記事で紹介した8例では、原状回復費の助成上限や使用料の還付率が制度ごとに異なります。市川市の令和8年度分の助成・使用料返還は受付終了しているため、金額だけでなく現在の受付状況も確認してください。
- 補助金はいつ振り込まれますか。
-
支払時期は制度ごとに異なります。撤去費助成では工事後に実費を確認して支給する制度がある一方、事前申請・承認が必要な制度もあります。交付時期と事業者への支払条件を事前に確認してください。
- 補助金の申請に間に合わないことはありますか。
-
予算上限がある制度では、年度途中に受付を終了することがあります。市川市では令和8年度分の使用料返還・原状回復費助成が2026年5月22日時点で受付終了となっています。申請時期を決め打ちせず、検討時点で最新の受付状況を確認してください。
- 墓じまいの費用はどれくらい用意すればよいですか。
-
2026年の調査では31万円〜70万円が最も多く(31.3%)、30万円以下と合わせて約48%が70万円以下で完了しています。ただし区画の広さや改葬先の選択によって幅があり、151万円以上の層も14.0%あります。まずは石材店の見積りと改葬先の費用を合わせて試算してみてください。
- 寺院墓地でも使える支援はありますか。
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寺院墓地・民営霊園が対象になる支援の有無は自治体ごとに異なります。自治体と墓地管理者に確認したうえで、必要な工事範囲の見直しや改葬先の比較、親族間の費用分担なども検討してください。
- 改葬許可の申請は郵送やオンラインでもできますか。
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厚生労働省の2025年3月の通知により、オンラインでの申請受付が可能であることが示されています。埋蔵の事実を証する書面もPDFで提出できる場合があります。ただし対応の可否は市区町村ごとに異なるため、事前に窓口へ確認してください。
- 遺骨が複数体ある場合、手続きはどうなりますか。
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複数の遺骨がある場合の申請単位・手数料は自治体によって異なります。現在の墓地がある市区町村に、申請書の作成単位と手数料を確認してください。改葬先の費用も体数で変わる場合があります。
【まとめ】墓じまいの費用と補助金で押さえておきたいこと
鎌倉新書の2026年調査では、同社の調査対象者のうち31万円〜70万円が最多で、30万円以下と合わせると約48%でした。自治体支援は全国一律ではなく、対象墓地・条件・受付状況が制度ごとに異なります。最後に要点を整理します。
押さえておきたい5つのポイント
①費用の中心帯は31万円〜70万円、約48%が70万円以下
2026年の鎌倉新書調査では31万円〜70万円が31.3%で最多、30万円以下(16.8%)と合わせると約48%でした。ただし同社サービス利用者を対象とした調査であり、全国一律の相場を示すものではありません。撤去工事費と改葬先費用を個別に見積もってください。
②自治体支援の対象・条件は制度ごとに異なる
本記事で紹介した8例は特定の公営墓地・都立霊園等を対象としていますが、全国の制度を一律に一般化はできません。お墓の所在地、管理主体、使用者の条件を確認し、自治体と墓地管理者に問い合わせましょう。
③「補助金」以外に使用料の還付・施設変更も確認する
本記事で確認した磐田市・玉野市には使用料の還付制度があります。玉野市は許可時期だけでなく承継の有無によって適用率が変わる場合があるため、個別条件を確認してください。
④年度予算に上限があり、途中で受付が終わることがある
市川市では令和8年度分の使用料返還・原状回復費助成が2026年5月22日時点で受付終了となりました。予算上限のある制度は申請状況で受付が変わるため、検討時点で確認してください。
⑤申請は工事の前に動き出すことが大切
制度によっては、着工前の申請・承認、見積書、工事前写真が必要です。工事を依頼する前に、自治体の制度と墓地管理者の手続きの両方を確認してください。
進めるときの最終チェック
| チェック項目 | |
| □ | お墓が公営墓地か寺院墓地・民営霊園かを確認した |
| □ | 自治体に助成・還付制度の有無と今年度の受付状況を問い合わせた |
| □ | 家族・親族に墓じまいの意向を伝え、合意を得た |
| □ | 墓地の管理者に必要な原状回復の範囲を確認した |
| □ | 石材店から見積書を取得し、工事前の写真を残した |
| □ | 改葬先を決め、受入証明書等の必要書類を自治体に確認した |
| □ | 改葬許可の申請方法(窓口・郵送・オンライン)と手数料を確認した |
| □ | 助成の交付時期と工事費の支払条件を確認した |
結論
墓じまいでは、工事を発注する前に自治体の支援制度と墓地管理者の手続きを確認することが重要です。事前申請が必要な制度もあるため、早めに確認しておくことで利用できる支援を見落とすリスクを減らせます。
改葬件数は2024年度に176,105件と過去最多を更新し、10年で約2.1倍に増えました。手続きの選択肢も、オンライン申請の明確化など年々整えられてきています。ご先祖を大切に想う気持ちを軸に、無理のない形で次の供養へつなげていきましょう。
