1991 カタログ「京仏具」平成3年度版 シリーズ仏像流転ーインド編2ー

シリーズ仏像流転ーインド編ー

平成3年度取材地一覧
釈尊がこの世をさられてからおよそ2500年。
人々はその遺徳をしのび、さまざまなかたちでそれを表現してきました。釈尊のみ教えが、ヒマラヤを越えシルクロードかた中国、日本へ、もう一方ではスリランカを経て東南アジアの諸国へと拡がってゆくなかで、その造形もそれぞれの地方色、時代色を反映し、個性豊かな表現の花を咲かせてゆきます。
しかし、一つ一つの造形の底流に脈打つものは、いずれもみ仏への敬愛の情、帰依の念、そしてそれをかたちにせずにはいられない人間のエネルギーの凄まじさでしょう。仏像や仏具を造る私たちにも、その伝統はまがうことなく滔々(とうとう)と受け継がれているのです。
仏像流転という雄大な流れの源に遡る旅を5年にわたってお届けします。第1回目の今年は、仏教発祥の地、悠久のインドから・・・・。
 
【平成3年度取材地一覧】
1. サーンチー 2.マトゥラー 3.サールナート 4.アジャンター 5.エローラ、オーランガバード 6.カーネリー 7.ニューデリー 8.ヴァイシャーリー
 
 
インド編は、5回に分けて掲載致します。Part2は、[仏像誕生]をお届け致します。

 


[仏像誕生]
天地をうめつくす、聖と俗の饗宴
1.マトゥラー博物館「仏坐像」2.ニューデリー国立博物館「弥勒菩薩立像」
 
■民俗信仰の聖地に華開いた、聖なるもののかたち。
 
釈尊を暗示するシンボルの表現から、人間のかたちを持った仏像がはじめて造られたのは、紀元後1世紀ごろと考えられています。その画期的な歴史を刻んだ場所のひとつが、中インド・ヤムナー河のほとり、マトゥラーです。
首都デリーと、タージマハールで有名な古都アグラとの間に位置するマトゥラーは、古代インド美術の大いに栄えた地でありました。そこでは、ヤクシニー像やヤクシャ像など、様々な土着の自然神が造形化されていました。最初期の仏像はその影響を受けて造られたのだろうと推察されています。
一方、仏教の大乗的広がりに呼応して、種々の仏菩薩像が考えだされたことも、仏塔崇拝の仏教儀礼を乗り越える今ひとつの契機となりました。マトゥラーのごく初期の仏像は、その刻文に「菩薩」と記したものが多いのですが、修行時代の釈尊=「菩薩」をまず造ることで、仏像表現のためらいを克服していったのだろうと考えられています。
これらの仏像は、ほとんどが赤い砂岩から掘り出されており、独特の粘り強さを感じさせます。大きく見開かれた目、厚い唇、四肢に漲(みなぎ)る肉体の充実感・・・・。源初の仏像からは、バイタリティや躍動感といった生命の力がひしひしと伝わってくるようです。仏像の、もうひとつの起源の地といわれるガンダーラの造作とは全く異質の、まさしく、インド固有の美意識のうえに開花したみ仏のかたちといえましょう。
南インドのアマラーヴァティー地方においても、紀元後2~3世紀にさかのぼる仏像の石造彫刻が多数発見されています。この地方に栄えたアーンドラ王朝が生んだ特異な仏教美術のかたちでありますが、やはり、無仏像時代が長く続き、マトゥラーやガンダーラにやや遅れて仏像の創作が始まることから、造形的にこの先駆的両地方の影響を受けているものと思われます。
 
1.マトゥラー博物館「仏坐像」(2世紀、マトゥラー)
2.ニューデリー国立博物館「弥勒菩薩立像」  (2世紀、アヒチャトラー)
  3.ニューデリー国立博物館「ヤクシャ像」 4.マトウゥラー博物館「樹下ヤクシニー像」 5.ニューデリー国立博物館「シュリー・ラクシュミー像」 

 
 3.ニューデリー国立博物館「ヤクシャ像」
   (3世紀、ナーガールジュナコンダ)
 4.マトゥラー博物館「樹下ヤクシニー像」
 5.ニューデリー国立博物館
  「シュリー・ラクシュミー像」(1世紀、マトゥラー)
 
 
 
 
 
 

 
マトゥラー博物館「仏立像」 7.マトゥラー博物館「仏頭」 
 6.マトゥラー博物館「仏立像」(2世紀、マトゥラー)
 7.マトゥラー博物館「仏頭」(2~3世紀)


2006-08-23
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